私の放っておけない問題:公教育

「小学校の運動会の徒競走で、手をつないでゴールする学校がある」と聞いたとき、「何かヘン」と感じました。それって、社会じゃ通用しないでしょ?と。大切なのは、結果の平等じゃなくて、まずは機会を平等にしようとするということなんじゃないかと。

 また、日本の公立学校では、通常、学校を選ぶことや先生を選ぶことができません。もし、やる気のない先生や人間性に問題のある先生が担任になっても、クラスを変えてもらうことや教員を解雇することは難しい。それって放っておいてよいのか、と。

 公教育をより良くしたい、という想いで、三菱総合研究所というシンクタンクで文部科学省や他省庁の人材育成政策立案や事業支援などに従事してきました。公教育をよくするためには、連結する高校や大学のシステム、企業の採用、人材育成のシステムやその考え方自体を変えていく必要がありました。なぜなら、学校は社会システムの中の一部で、社会そのものの価値や考え方が変わらない限り、学校が変わることは難しいからです。

 未来を担う子どもたちの教育をより良くするためには、今の社会でいいのか?私たち大人は自信を持って自分たちの後姿を見せられるか?そんな問いを私たち自身に問いかける必要があるのではないかと思っています。

 大きな遠回りかもしれませんが、ソーシャル・イノベーションを創り出すことが、よりよい教育、よりよい社会の実現につながると信じています。

 

 

プロフィール:

 

吉村春美 Social Innovation Dialogue代表

 

 NTT、NTTAmerica、米国コロンビア大学ティーチャーズカレッジ(教育学修士)を経て、(株)三菱総合研究所に入所。教育分野の研究員として、官公庁や自治体の教育、人材育成施策立案、遂行支援、教育プログラム開発などのプロジェクトの従事。諸外国の教育政策調査など多数実施。特に、学校の自律的運営を可能にする米国チャータースクール、子どもの自主性や市民性を育むプロジェクト学習やシティズンシップ教育(市民教育)に大きな影響を受ける。

 教育問題、社会の根底にある問題に会社組織の枠を超えて、もっとしっかり向き合いたいと考え、退職。現在は、問題の本質と考える「対話(ダイアローグ)」と「関係性」をテーマに実践×研究者×デザイナーとして、ダイアローグやポジティブアプローチによる学校組織の活性化、関係性の再構築による問題解決支援、パーソナルコーチングを行っている。

 

対話から生まれる気づき・学びが、意識や行動の変革につながり、よりよい社会が実現されることに貢献したい。